「何やってるの?」嫁が聞いてきた。
「土曜にあな褒めするじゃん。夕方だけどまた熱中症にならないように体鍛えようと思ってさ」
リビングを締切り暖房をつけ、腹筋や、ストレッチをやっている俺は全身汗だくだ。パソコンやテレビが壊れそうと心配する嫁に我慢しろと言った。
東京都23区を回り、路上で触れ合う人を褒めるというこの個人イベント――あなたをめっちゃ褒めます。これは、天候に左右されることも多い。
ガード下で雨を防げればいいが、そうではない立地だと、移動するしかない。
冬は雪も降るし、夏は太陽にやられる。
嫁は、あな褒めをするのはいいけど、もう少し体調に気遣って欲しいといつも言っている。どうしてかと言うと、傘を差して話を聞いてくれた女の子と話すのに、びちょ濡れで話を聞いたことがあったからだ。
その子は、宗教の勧誘と思って俺をからかったのが始めらしいが――
19歳なのにレイプされて子供が産めなくなったのが可哀想で、彼女の気持ちに寄り添う手段が、傘を畳んで永遠に話を聞くという行動だったが、彼女は申し訳ないと言いながらも俺の勢いに押され話し続けた。1時間雨に打たれ続けていた俺は、結果的に――
肺炎になりかけた(笑
夏の日に直射日光を浴び過ぎて熱中症になったこともあった。それも、リストラされた50代のおじさんの話が可哀想すぎて、敢えて太陽に当たる俺を見せながら――あなたの心に寄り添っている。そんな主張をしてみたのだが、その気持ちは伝わったようで、最後に缶ビールを奢ってくれた。
お金もない彼から奢ってもらったあのビールは最高に旨かった。
でもきつかった。熱中症になり三日間うなされたから。
俺は性格的にやり過ぎるところがある。特に2回自殺未遂をして助かった過去があるから、自殺しようとしている人と触れ合ったら、死ぬ前にまだやることがあるんじゃないかと話し込んでしまうのだ。
※
ジョギングが終わり帰って来た俺に嫁が手招きをした。
「日焼け止めのいいものがあるから買ってきたよ。あとね、韓国のいい栄養剤も明日買ってくるから、それも用意しとくね。それと、前に夜のあな褒めで酔っ払いに絡まれてTシャツの首が伸びたじゃん。それを防ぐ為に堅めに作ってるTシャツも用意した。それと、これはいいと思うんだけど――」
彼女を抱きしめた。「汗臭くてごめん」
「もっと、色々用意したから見せたいのにー」
「分かってるよ。お前はこの3年いつも俺がむちゃするのを見続けてきたじゃん。俺があな褒めやるから動くって言い出したら、1回も否定はしなかっただろ?そこに相手を思う真っ当な思いがあるなら、突き進んでって言ってくれてたよな?今回もそんな思いでこんなに品物買ってくれたんだな」
私のことよく分かってると言う彼女に頭を下げた。「今はお店作りのことで贅沢できないのに、こんなに買わせてごめんな」
俺達の理想郷を作ろうと、店を東京都内で開こうと思っている。だが、いい物件に巡り合っていない状況化の中で、仕事も辞めて奔走している俺達の生活費は借金だ。
「メングは偽善もやり切れば真実だって言い続けてるでしょ?それを常に実行してるじゃん。それって嘘がなくて好きなんだよね。あな褒めで死にかけたことも沢山あったけど、その行動で救われた人も大勢いたでしょ?この活動は絶対日本を変えると思うの。それに韓国もね。もっと大きな活動になって世界を変えてよ」
そんな器じゃないと言うと「そうだった。メングは加齢臭きつめのただのおっさんだった」と切り返された。そして「今回、彼女が来てくれたらいいのにね」とも。
実は、中野駅前であな褒めをやると告知まで打ってやる理由がある。
それは、ある女性にもう一度この場所で会おうと約束しているからだ。
福島出身の彼女は、東日本大震災以降、放射能を調べ続けている。
「国は事実を隠ぺいし、福島民を殺そうとしている」
2012年に、千代田区で会った女性だが――
6カ国語ができる東大出身の女性だった。アメリカでジャーナリストとして活動していたが、日本政府の情報操作の酷さに呆れ果て、帰国した時に出会った。
すごく、デリケートな問題なので、今ははっきりしたことが言えないが――
世界が日本をどう見ているのかということを、彼女と話し合いたいと思う。
土地が放射能で犯され、癌が多発される近未来の日本になったら、どうオリンピックを開くのか?
ある国のデータでは、2020年の日本は癌患者で蔓延しているというデータもあった。それは、外国人数人の知り合い経由で得た情報だが。
俺は、国に言いたいのは、嘘がない国にして欲しいということだ。
福島で小児甲状腺癌が多発している事実を踏まえ、それを世に伝え、どう対応していくのかということを真摯に伝えて欲しいだけだ。――保障に関してもそう。
政府に言いたい。
外国との諍いでの対応を主軸にし、放射能で苦しんでいる子供たちをないがしろにするなら――
そんな政治は必要ない。
※
「ペゴパ」嫁がお腹が減ったと言った。
「メング、作品書いてる顔が怖いよ。あと3回は読み直してブログにアップしなよ」
「そんなに怖い顔してた?」
「悪い政治家みたい」
ハッとした。俺は政治家ではないし、ただのおっさんだ。彼女は、俺がこの記事を書いている横顔をずっと見て判断したのだろう。
もう止めた。
「何が食べたい?」彼女に聞くと焼きそばが食べたいと言った。
自転車に乗って西友まで行った。
夜空を見ながら思った。
――こいつといる時は、旦那でいなきゃ。

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