fc2ブログ

アラタコウ(工藤興市・くどうこういち)のブログ

国際結婚シリーズ、エッセイ、イベント関連、小説を載せています(^O^)

国際結婚をしてみたら――17歳年下、韓国人の嫁との生活。第221話

2012/11/30

昨日の話。


東京は21時ぐらいに雨が降り出した。

仕事が終わったのが21時。傘を差して家路を急いだ。

嫁に頼まれた食材を買い物して家に帰る。

「お帰り」彼女が出迎えてくれる。「メングどうしたの?傘持って行ったでしょ?」

朝、今日の天気予報をテレビで一緒に彼女と見ていて、夜に雨が降ることは知っていた。いつものように俺が仕事に出かけるのを見送った彼女は、傘を持っていたのを見ていた。不思議に思って聞いてきたのだ。

「駅までは傘を差して帰ってきたんだよ」ポケットからハンカチを出してダウンジャケットを拭く。

「駅まで傘を持って帰ってきたのに、何でこんなにびちょびちょなの?」彼女がタオルを持ってきて俺の頭を拭いてくれた。

「駅の階段をつらそうに降りてるお婆ちゃんがいてさ、傘あげちゃったんだよ」

「それで濡れて帰ってきたの?」

「うん。そのお婆ちゃんがさ、傘あげたらすごく感謝してくれて、こっちも気分よくなっちゃった」

「悪い人がいい人演じたんだ?」

「うるせーよ。でも笑っちゃったのが、駅の前にバスのロータリーがあるだろ?お婆ちゃんすぐバス乗っちゃってさ、傘差さずに帰ったんだよ。うそ~んって感じでさ。近くにいたサラリーマンや高校生風な制服着た女の子に苦笑されて、軽くすべった感じだったよ」

俺の話し方が面白かったのか、彼女は手を叩いて笑っている。ベットルームでスエットに着替えてリビングに戻ると、彼女が考え事をしている。

「なぁ、どうした?」

「デジャブなんだけど」そう言った彼女は顎に指を当て目の玉を上に向けた。思い出したことがあると言われ、キムチチゲを食べる手を止めた。

「ねぇ、昔にメングがやったこと覚えてない?中野坂上でお婆さんおんぶして駅まで行ったことあるじゃん」

彼女に言われて思い出した。そうだ。確かに似たような状況があった。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓


触れ合いレポート「ばばぁ」2008年10月20日


雨が降っていた。

いつもの朝までバイトした帰り道。

大久保から、中野坂上までの距離はかなりある。

雨が激しさを増してきた。

目の前には、有り得ないだろうというぐらいの腰の曲がったお婆さん。

傘もささずに、一歩、一歩、大地を踏みしめ険しい顔をしながら歩いていた。

徐々に近づく俺は、こんなことを思った。

――こんな状況じゃ、傘を差し出すのが常識だろうな。でも、劇団の舞台公演前で風邪引きたくないしな。それにしてもばばぁになると、あんなに腰が曲がるんだな。

礼儀として声をかけないわけにもいかないと思った俺は、彼女に、「よかったら一緒入りませんか?」と声をかけた。

多分、しぶしぶ俺が傘を差し出したのを察したのだろう。彼女は俺の目を見ながらこう言った。

「偽善者の力は借りん」

驚いた。だが彼女の言う通りだ。

――こんなばばぁと駅まで歩いて帰ったら何十分かかるかわからない。

正直傘だけ差しだしたら走って帰りたかった。

その気持ちを見透かされた気がした。

俺は天邪鬼だ。

偽善者と言われたら、その偽善っぷりを最大限見せたくなる。

――よし。じゃ俺の偽善っぷりを見せてやるよ。

持っている傘をぶっ壊して、彼女の前でしゃがむ。「おい、ばばぁ、乗れ」

「あほか!お前傘を作る職人さんに申し訳ないがな。ほんにアホじゃの」

「婆さん岡山出身か?」

「広島じゃ」

「ほんに?わしは岡山じゃで」

「ほーか」

「つーか、早くおんぶさせろよ。ほら」

俺が被っているニットキャップを彼女に被らせ、強引におんぶをして駅までの道のりを急いだ。

周りから見れば遭難者だ。

でも俺達は、お互いの体温を感じ合いながら進んだ。

途中にあった交番で、若いお巡りさんが不思議そうに俺達に質問をした。

「どうしたんですか?」

彼女が言った。

「邪魔すんな。わしの息子におぶってもらって駅までいきょるんじゃ」

彼女はニットキャップを深く被り俺を急かす。

ギュッとしがみ付く彼女は俺の子供のようだ。

お巡りさんが、「傘があるので貸しましょうか?」と申し出てくれたのに、彼女はそれを拒否した。何でと聞くと、「傘があったら、お前に乗れんからな」と言われた。

――やれやれ、困った婆さんだ。


駅が目前になってきた。

「ほら、びちょびちょになっとるけん、はよう風呂入って寝なよ」彼女を降ろしハンカチで白髪頭を拭いてあげていると、手を掴まれた。よぼよぼの婆さんなのに力強い。

細い目を見開いた彼女は、真剣な顔で言う。

「うちの娘の婿になれや」

「娘って何歳なん?わし40歳で?」

「出戻りの娘でもよかったら、結婚してや」

「むちゃ言うなや。わし韓国に恋人おるし」

「そうか……。」

残念そうにしている彼女に聞いた。

「何でわしを婿になってって言ったん?」

「じゃって、娘の婿になったらいつも会えるがな」しおらしく俺を見る彼女は乙女のようだ。

「婆さんわしに惚れたんか?」冗談で言うと、彼女は、「愛に歳の差はないで」と髪をかき上げる仕草をしてウインクをした。

「お前じゃったら、娘も幸せになれると思っての。今日はありがとな」彼女はお辞儀をして去っていった。

彼女の後姿を見ながら思った。

――今度田舎に帰ったら、おかんをおんぶして歩いてみたいな。

体は冷えてしまったが、心は温かくなった出来事だった。


↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

「今回は傘あげただけで済んでよかったじゃん。前はその後風邪引いて大変だったんでしょ?」彼女が聞いてくる。

「マジでやばかったよ。どうにか舞台公演はできたけどな。でも死ぬかと思った」

風呂に入り、ベットルームに行くと、彼女が運動をしている。

「ダイエットの運動でもしてるのか?」俺の質問に違うと彼女が言った。

「17歳も年上のメングと結婚したんだから、いつか私よりも先に足が動かなくなるかもしれないでしょ?私がおんぶしてあげなきゃいけないから、今のうちから体鍛えておこうと思って」

声を出しながら、ヒンズースクワットを続ける彼女を見て思った。

俺が選んだ嫁は、こいつで間違いなかったと。



夫婦恋愛 ブログランキングへ

FC2 Blog Ranking


にほんブログ村 国際結婚(韓国人)
スポンサーサイト



テーマ:国際結婚 - ジャンル:結婚・家庭生活

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://rdkudou.blog65.fc2.com/tb.php/1804-e57323a4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめ【国際結婚をしてみたら】

2012/11/30昨日の話。東京は21時ぐらいに雨が降り出した。仕事が終わったのが21時。傘を差して家路を急い

  • 2012/12/02(日) 08:49:53 |
  • まっとめBLOG速報