fc2ブログ

アラタコウ(工藤興市・くどうこういち)のブログ

国際結婚シリーズ、エッセイ、イベント関連、小説を載せています(^O^)

【コンプレックスを越えて、 第102話】


ふれあいレポートという作品を7年近く書き続けています。その中からこのシリーズにふさわしい話を選びました。

102話はこのエッセイです。


【31歳の彼女】


友達から電話がかかってきた。

「こうちゃん久しぶり」

「お前1年振りぐらいじゃん。元気にしてたのか?」

「元気だけどさ、また振られちゃったよ」

「そっか。原因はあれか?」

「うん」

意気消沈している彼女は31歳。俺が原因と言ったのには訳がある。彼女は元AV女優だ。若気の至りという言葉があるが、20歳で素人企画物のAVに一度だけ出演した。

当時付き合っていたホスト経由でそのAVに出演したらしいが、顔や性器のモザイクが外され、ネット上で晒し者になった過去がある。

芸能人やカップルのセックスが流出するご時世、ネット上にエロス関係が流出したらもうどうにもできないだろう。コピペされた画像や動画は縦横無尽にネット社会を走り回る。彼女の消せない過去だ。

さすがに11年も経つとネット上にも彼女のAVは上がっていないみたいだが、まだ彼女のモザイクなしの性器が出てくることもあるらしいのだ。前に付き合っていた彼氏は、彼女の性器の写真をネット上で発見し問い詰めた。

「おい、これお前アソコだろ?」

「違うよ。何で?」

「だって、ほくろの位置や、ビラビラの大きさもまるっきり一緒じゃん。お前浮気相手にこんな写真撮らせたのか!」

彼女の性器は特徴があるらしく、付き合った男にはすぐ分かるそうだ。

――運送会社でトラックの運転手をしている彼は、同僚が彼女がAV女優だったと気づき、それが元で大喧嘩になり別れた。

――サラリーマンの彼は、秋葉原で中古のDVDを探している時に、たまたま彼女のAVを見つけ、その日のうちに別れた。

20歳から5回連続で振られた後、付き合う男には初めにこう言ったそうだ。

「私は元AV女優だったの。それでも付き合ってくれる?」

ほとんどの男は引いて逃げたらしいが、中には付き合う男もいたそうだ。だが、付き合っていくうちに起こる現象。それは彼女の過去で喧嘩になることだった。

男の心理で考えたら、ジャラシーでどうにもならない感情になるのは分かる。独占欲の強い男だったら尚更切れるだろう。

たまたま友達のバイト先の居酒屋で働いていた彼女と友達になったのがきっかけでこうして友達付き合いをしているが、彼女は優し過ぎる。

AVに出たのもホストの彼の借金を返してあげたいという思いからだったし、他の彼氏の為には、その彼の親の介護費用を工面するために働き過ぎで体を壊し、入院したこともある。

誰かの為に命懸けのスタンスの彼女を見ていて、この11年勉強になった俺がいたが、もう少し器用に生きられないのかと思ったりもしていた。幸せになって欲しい友達の一人なのに、また振られたのかと思うと可哀想でならない。

「今回は、彼の別れ台詞は何だったの?」

「淫乱豚だった」

笑っている彼女の声を聞くと、胸が締め付けられる。

「お前、過去のことを告白するのはもう止めたら?言わなくていいこともあるじゃん」

「私もそう思ったりしたんだけど、こうちゃんが私の希望の光になったの」

「どうして?」

「だって、元AV男優のこうちゃんがあんな綺麗で可愛い奥さんゲットしたでしょ?それにバイだって告白して本にも書いてるし、結婚した今だって平気でバイだって言ってるじゃん。この前のあのコクシテのおとんっていうエッセイでもバイって言ってたでしょ?」

コクシテって何だと尋ねると、俺が今書いているシリーズの「国際結婚をしてみたら」を略しているそうだ。彼女の周りではそう呼んでいるらしい。

「こうちゃんも無茶苦茶やってきたでしょ?強制猥褻でパクられて留置所に2週間入ってたこともあるじゃん。まぁ、冤罪だったけどね」

「不起訴だったからな。でもあれつらかったよ」

「それすら本のネタにして書いたでしょ?」

「書くよ。俺はドキュメンタリー作家なんだから。なんちゃって」

さっきまでの落ち込んでいた彼女の声のトーンが上がる。

「私ね、こうちゃんが結婚するなんて思ってなかったから、ほんとビックリしたの」

俺もビックリしてると言うと、爆笑する彼女。

「お前、ダーリン探すまで諦めないのか?」

もちろんと即答する彼女は、これからも過去を話して受け入れてくれる人を探すらしい。意地悪な質問をしてみる。

「それが70歳ぐらいになったらどうするよ?」

馬鹿じゃんと一喝される。何が馬鹿なんだと聞くと、彼女は自信に満ち溢れた声で俺を喜ばせる。

「それも私の運命。これからもガンガンいくよ」


電話を切って彼女を思い微笑んだ。誰だって人に言いたくない過去はあるはずだ。だが、彼女は過去から逃げず今を精一杯生きている。


俺は、こういう前向きな人間が大好きだ。



大道芸・パフォーマー ブログランキングへ


FC2 Blog Ranking


にほんブログ村 国際結婚(韓国人)
スポンサーサイト



テーマ:家庭・社会・国の問題を考える - ジャンル:福祉・ボランティア

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://rdkudou.blog65.fc2.com/tb.php/1757-41a91892
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)