東京れぽ~と「国境を越えるのは恋歌」編集する 2008年10月05日22:47
いつもは「お疲れ」ってパソコンのヘッドセットで言うよね。
webカメラはつけずに話してるから、毎日話してても質感がなかった。
カメラなんかつけてても質感なんかあるわけもない。
だって、触れ合いがないから。
だって、この場所に貴方がいないから。
だから俺は貴方の傍に行く。
無理なスケジュールを組んだけど、強引にでも貴方に会いに行く。
だって会いたいから。
触れ合って「お疲れ」って顔を見て言い合いたいから。
毎日スカイプで話すから、まるで傍にいるように錯覚するよね。
でも、俺はそれが嫌だったんだ。
だって、貴方が傍にいないんだもん。
舞台上から貴方が泣いたり笑ってたりするのを見るのが好き。
俺のチャリの後ろに乗って騒いでる貴方が好き。
俺の手料理を美味しそうに食べる貴方の顔が好き。
もう三ヶ月も俺は貴方の体温を探している。
どこに行っても思い出だけしかない。
だから貴方に俺から会いに行くんだ。
貴方の国の常識じゃ有り得ないお願いをしたのかもしれないね。
「親に会って家に泊まりたい」
まずは承諾してくれた親に感謝だけど、有り得ない提案をしちゃったね。
貴方は外国人。
でも、貴方の国に行ったら俺が外国人。
貴方の国では親の家に泊まるのが非常識かもしれない。
結婚もしていないのに。
でもね、どうしても貴方が好きな気持ちを親に伝えたかったんだ。
その為には、一緒に生活し、貴方の親を知ることで考えてみたかったんだ。
だって、貴方は親が大好きだから。
「その親から引き離して日本人になって」
そんなこと俺には言えないよ。
だから、貴方の愛する親や親友に会って俺がどう思われるのか試してみたくなったんだ。
俺は貴方が好きだ。
だから、貴方の愛する人にまず会いたい。
その触れ合いの中から、貴方を奪うのかどうかと考えたいんだ。
俺は泥棒かもしれない。
俺のエゴの為に、結果的に貴方の家族や親友に恨まれるかもしれない。
でも、俺は貴方がいないと生きていけないんだ。
だって、日本でいつも貴方を探しているから。
どこにいても貴方を探しているから。
貴方がいつも俺の心の中にいるから。
街中にある感動に巡り合った時、作品を書く前に貴方に話したい。
手を振り汗をかいて、貴方に伝えたい。
こんな出会いがあったんだよって。
どこかの国じゃ、「最愛の人と巡り合ったらそれだけで幸せな人生だ」
そんな諺もあるんだって。
俺も笑いながら頷けるよ。
ほんと。
「来年から貴方の国に行き、一年歴史や文化を勉強しながら傍にいたい」
本気の俺の提案に貴方は言ったよね。
「RAINDOGSでもっと活動して、皆に愛される集団になったら私を奪いに来てって」
俺のたった一人の人は貴方だったんだ。
俺の演ずるもの、書く作品、全てもファンは貴方だった……。
だから、明日韓国に行きます。
貴方の心を奪いに。
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東京れぽ~と「愛のサンドイッチ」2008年11月18日00:23
「なぁ、わし彼女が好き過ぎて、来年から韓国で暮すかもしれんわ」
「はぁ?」いきなりの電話でおかんはビックリしているようだ。
「お前、劇団どうするんなら?」
「太田には一年ぐらい一人で頑張ってもらう」
「ほんにか」
「あのな、韓国に行った時、彼女のお母さんと話せなかったって言ったが?」
「おん」
「わしな、好きな女のおかんとも話せないのが嫌なんじゃ。じゃって彼女はほんにおかんが好きじゃけ」
「ほんで?」
「わし、韓国で学校に行って韓国語を覚えて、彼女のおかんと話したいんじゃ」
反応を伺っていたが何も言わない。向こうも酔っている。自分の素直な気持ちを聞いて欲しいと思った。
「わしな、彼女のおかんの母国語で言いたいんじゃ。――貴方の娘さんを俺に下さいって。ちゃんと言いたいから綺麗な韓国語を覚えたいんじゃ。彼女のおとんより、俺にとってはおかんが最大のライバルなんじゃ」
「じゃけんな――」話を続けようとする俺に、おかんは 「みなまで言うなや。その心意気ええがな」と言った。
俺は来年から年から韓国で一年暮そうと思っていた。
彼女と一緒にいたい。ただそれだけの理由で。
金もないし、韓国語も喋れないのに、いきなり四十のおっさんが韓国に飛び込んでゼロから始める……。
劇団のメンバーや、親友、知り合いをビックリさせた告白だった。
「電話とかたまにはできるんじゃろ?」おかんが言う。
「それは大丈夫」
「お前、気合い入れて彼女のお母さんに気にいられろよ」
「うん」
「ほんに、お前は珍な子じゃな」
「えっ?」
「いつもビックリさせることばっかり言うわ。まぁ、それが面白いんじゃけどな。まぁ、好きにすればいいがな」
おかんと話し終わって、すぐ彼女にスカイプを使ってパソコンから電話をした。
「――そんなことがあってさ、俺は来年お前の傍で暮したいと思う。どうかな?」
彼女は無言のままだ。聞こえてしなかったのかと思い、また同じことを言うと、バカと言われた。
「何で私に日本に来いって言わないの?役者や作家で売れて私を奪いに来てよ。興市ただ逃げてるだけだよ。私、韓国に来られても迷惑だ」
精一杯の強がりで俺を突き放してくれたのだろう、声を聞いているだけで彼女の心が見えた気がした。それは、とことん戦ってから考えろということだ。
二週間後。
おかんに電話をした。
「――ってこと言われて俺は感動したんじゃ」
「ほうか」
「わし、来年も日本で頑張るわ」
「ええ子に出会ったの」
「えっ?」
「彼女の言った言葉の裏を考えにゃおえんで。辛いこと言って敢えてお前のケツ叩いたんで」
「わしもそう思っとる」
「お前が売れて金持ちになろうがそんなことはどうでもええ。ただお前が毎日の生きていることに感謝して笑って生きてとればそれでええ。今お前は最愛の伴侶を掴もうとしとる。その為には命懸けじゃで?わかっとるの?」
おかんのすごみのある声にびびった。
今までやんちゃな俺を命懸けで守ってきてくれたおかん。そのおかんが俺の彼女を認めてくれたのが嬉しかった。
「お前の彼女はうちの家族じゃ。その子に何かあったら命懸けで守るで。うちはそう決めた。じゃけ、じうんちゃんが親元を離れてまでお前の傍にいてくれるなら、工藤家も命懸けで二人を応援するって伝えてくれ。日本で友達もいないなら、うちが友達になる。おかんが恋しくて泣いてたらうちがおかんの代わりになる。お前がじうんちゃんを泣かしたら、岡山から東京に行ってお前をしばき捲くるけ。じゃけんな、いつかうちが作る料理でも食べにきんちゃいって伝えてあげてな」
静かでいてすっと心の奥深くに入り込んでくるおかんの声に、自然と涙が出てしまった。
おかん、本当にありがとう。
これから人間の器を大きくして、彼女を韓国に奪いに行くから、日本で一緒に暮したら、真っ先に岡山に連れて帰るね。
その時はよろしく。
子は親を選べないというが、俺はこの親で本当に幸せです。
いつも感動をありがとう。
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東京れぽ~と「2008年11月20日を忘れない」
2008年11月20日。
俺は40歳になった。
朝一で親と同居している妹の長女から「おめでとう」のメール。「ありがとう」そう返信した。
20時。
いつもはおかんから酔った声の「おめでとう」がある。
だが今日はその電話がない。
――風邪でも引いたのかな?
電話しようと思った矢先、メールが来る。
「誕生日おめでとう。頑張ってな」
――あれ? いつもは電話なのに?
何故おかんが電話ではなくメールで「頑張ってな」そう送っのか深く考えた。
おかんとはいつもはお互いの主張をぶつけ合いの喧嘩ばかりしている。お互いに言葉人間だから、余計なことまで言って傷つけ合うこともよくあった。
――ひょっとして、おかんは偲ぶ想いを俺に伝えたかったのか?
俺はふと思いつき、おかんに電話でなくメールした。
「今日、この日に俺を産んでくれて本当にありがとう」
暫くすると、親と同居している妹から電話があった。
「お兄ちゃん、おかんがおかしい」
「何?風邪でも引いたんか?」
「あのな、おかんが焼酎飲みながら携帯見つめて泣き笑いしとるんで」
聞けば、俺が送ったメールを酒の摘みにしながら、一人で俺の誕生を祝ってくれていたんだと。
俺はそれを聞き泣いてしまった。
言葉。
それを使わなくても、メールだけで気持ちが伝わったんだ。
メールも温度があることもあるんだ……。
「お兄ちゃんは愛されとるな」妹は笑っていた。
俺は言った。「焼酎飲み過ぎないように伝えてや」
電話を切ってまた泣いた。
ネットなんか無縁だから、おかんはこの作品を読むことはできないね。
でも、また本としていつかこのエッセイを出版するから、その時はこの作品を読んで懐かしんでね。
おとん、おかん。
俺は貴方達が親で本当に幸せです。
これからも子供でいさせて下さいね。
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東京れぽ~と「この日を忘れない2」
パソコンが調子悪く韓国にいる俺の彼女ともスカイプで話せない日々が続いていた。彼女とはもう3ヶ月も会っていない。イベントの赤字を補う為に、2009年も正月関係なく連続で働く状況だ。
足が有り得ないぐらい腫れて、歩くのも困難になったぐらいに働き巻くって疲れ果てていた。
睡眠も食事も関係ないぐらい働いている自分の頑張りに酔ったりもしたが、マジで死ぬんじゃないかと心配もし始めた。
太田も腰が痛くて毎日がつらそうだ。
そんな時に彼女から電話がきた。
「興市、よしオパ大丈夫?」
彼女に太田の事情は話していたが、彼が心配かけたくないと言っていたので大丈夫だとメールしていた。
「興市、1月14日に成田に迎えに来てね」
言い間違えかと思って聞き返したが、14日に日本に来るという。
「私、日本に行ってよしオパの看病するから」
彼女はただ太田の頑張った姿に感動したから日本に来るというのだ。
「なぁ、ウオンも安くなってるし、簡単に日本に来れないだろ?仕事先の同僚とのバランスもあるだろう?俺は会えるのは嬉しいけど無理すんなよ」
「大丈夫。私の同僚ってみんなRAINDOGS大好きだよ」
彼女は、ネット上にあるうちの劇団の動画を仕事先の同僚に見せながら、家族の殺し合いに悲しんで活動している劇団なんだと力説してくれている。今では彼女の勢いに押されて、俺の著書を回し読みしてくれているらしい――彼女が韓国語に翻訳をしたエッセイ。
彼女と電話を切っておかん電話をした。数日前の彼女とのやり取りを伝えると、いきなりおかんが泣き出した。
「どしたん?大丈夫?」
「じゃってな、健気な子じゃが。太田君の看病しにだけに日本に来るなんて。もちろんお前に会いたいのが一番じゃろうけど、あの子はほんに純粋に太田君を気遣ってる。そう思ったら泣けてきてな」
※
こうしてパソコンに向かい、作品を書く俺がいる。
2008年。12月30日。俺はこの日を忘れないだろう。
擬似家族で繋がっている俺達が、本当の家族以上に慈しみあっていた。
一期一会という言葉を肌で感じた日だった。
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東京れぽ~と「この日を忘れない」
2008年。ありがとうイベントのことについて説明するが――
1ヶ月に1度、本気で愛する人にありがとうを言おうよ――それを主旨としたイベントをしてきた。
1ヶ月に1回の舞台公演をするというのは、かなりきついが、どうにかボロボロになりながらもやってきた。
バイトしながらこのイベントに懸ける俺達は45歳の太田と、40歳の俺のおっさん2人だ。
借金を積み重ねながら、1年間お客さんの幸せになる未来を祈りながら演目を演じ続けた……。
2008年12月30日
おかんから米が届いた。
「イベントいけんかったから、その罪滅ぼしじゃ」
おかんはありがとうイベントのファイナルに行こうと、一生懸命働いて交通費を稼いでいた。だが、そのせいで体を壊し寝込んでしまったのだ。
おかんとの電話で今年のイベントは、お金に代えられない素晴しい経験をさせてもらったと報告した。
「隣に太田がおるし、ちょっと代わるわ」太田に携帯を渡す。
「本当にありがとうございました。こんないい米を送ってくれるなんて感激です」太田は涙ぐんでいる。
電話越しから聞こえるおかんのテンションの高い声や、正座をして話している彼を見て思った。
――俺達は擬似家族かもしれないけど、極でお互いを想い合っているな。
太田はヘルニアのがひどく、1年のイベントで腰が砕けそうになっていた。
今でも医者に通っているが、80歳の腰だと言われてしまったそうだ。
この1年、本番前に楽屋で動けなくなっていた太田の肩をよく叩いたものだ。
本番前に暗闇の中で太田に言ったのを思い出す。
「スポットライトが照らされたら、もう表現者じゃん。腰の痛さはお客さんには関係ない。舞台上で腰を砕け。絶対俺がそれを笑いに変えてやるから!大切な時間とお金を使ってくれるお客さんに最高のものを届けようぜ!」
腰が据わらない太田はその言葉を横になりながらよく聞いていた。
言葉にはしなかったが、微笑んでいた太田の顔が今でも忘れられない。
絶えられない痛みの中、太田は命懸けで家族の殺し合いを悲しむ姿を舞台上で元気に見せてくれた。まさに戦友だ。
運送会社で働く太田は、当日欠勤はしたことがないのに、このイベントが終わって腰が砕けそうになって2日休んだ。
俺がバイトから帰ってきた時、動けない彼は変なポーズでリビングで横になっていた。
劇団をやり始めて、相方の彼とは12年の付き合いだ。生活費を切り詰めようと一緒に住んで6年。
考えてみれば、12年前からこいつはいつも命懸けだった。
「たった一人の人に伝わりもしないのに、世界に伝わるか!」己の座右の銘を貫き通している。
熱い漢だ。
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