玄関は賑やかだった。
「お帰り」と「メリ-クリスマス」の言葉が入り乱れた。
手作りの部屋の装飾。次男のL君は「唐揚げ、唐揚げ!」と騒いでいる。一生瓶を片手に兄弟船を歌う谷さん。鳥のかしわを口一杯に頬張る長女のSちゃん。「パパ、パパ」とはしゃぐ次女のRちゃん? 腰を気遣いながらも、手拍子で音頭を取るKさん。
よく考えてみたら、皆血が繋がっていない。でもこの温かな空間は、間違いなく家族というものだと感じた。
今になって言えることだが――グル-プホ-ムというものがある。未来型の老人ホ-ムなのだが、少数の軽度の痴呆のお年寄りと、職員が共に料理を作ったり、旅行に行ったりと、一方的に介護するという段階から、少し上の一緒に何か共通目的を持ち、実践していく――これを主体としたのがグル-プホ-ムだ。
ホ-ム長のNさんと知り合いだということもあり、何度か見学に行かせてもらったが、僕が働いていた特別養護老人ホ-ムとは、やはり形態が変わっていた。
作業的な違いは置いといて、一番に考えたのは、家族ってなんだろう? ということだった。
確かに疑似家族なのだろうが、そこには温かさがあった。古き良き日本の風景。助け合いながら、一緒に生きていく。
現実の現代の家族象ってなんだろう? 日本国民全てがそうではないが、嫌なニュースが多い。
親が子を殺し、子が親を殺す事件のことだが。まったくありえない話だ。
その過程には様々な事情があるのだろうが、あまりにも無茶苦茶すぎる事件が多発している。
普通でいることの素晴らしさを、僕達は忘れてしまったのではないだろうか? 僕は今、劇団の仲間と一緒に住んでいる。これも僕の人生でまたありえなかった経験なのだが。
同棲は何回もしてきた。勿論異性と。しかし今こうして同性と暮らしてしても、そこには温かさがある。お互いを気遣い、お互いの才能を尊敬し、共に共通の目的意識を持ち生活している。
これはまるでグル-プホ-ムの経営理念と近いものがある。居酒屋のバイトをしていた時に、一人のアルバイトの男の子の言った言葉。
「よく考えてみたら、こんな長いバイト時間を一緒に働いてたら、家族よりも長い時間一緒にいるってことですよね。だから仲間を大切にしたいですね」
疑似家族。響きは悪いが、その内容によっては、本物の家族以上になる時がある……。
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大事には至らなかったが、かなり腰を痛めてしまっていたKさん。
張り切る気持ちは分かるけど、今日のKさんはちょっと変だ。
谷さんが冷たいタオルを腰に当てて看病をした。汚い楽屋のヒ-タ-が、古いのかカラカラ音を出しながら回っている。俯せに寝ているKさんは、何故かとても寂しそうに見えた。
何となく声が掛けづらい。そんな僕を手招きして楽屋の外に谷さんが誘い出した。
それにしても、見た目は普通のおばさんの様に見えるのに、チラチラとトレ-ナ-から見え隠れする刺青は、ほんと綺麗で見事だ。
化粧もしてないのに、唇だけ赤いル-ジュを引く谷さんも、すごい人生を経験してきたのだろう。
谷さんはKさんを「一人にしてあげな」という。
不思議がる僕に、谷さんは静かに話し始めた。
「あの子ね、子供の頃に親が離婚して、両方ともあの子を引き取らなかったの。でね、母方の祖母に育てられたんだけど、すぐに亡くなっちゃって。結局は親戚の家をたらい回しにされたんだって」
年上のせいか、谷さんはまるでKさんの母親の様に優しく話した。
それと対比で、僕はこんな告白話は聞きたくなかった。
ただでさえKさんの生き方に惹かれている自分がいるのに、これ以上Kさんを深く知ってしまうと、相手を受け入れ過ぎて、自分自身が無くなっていく恐怖を感じてしまったからだ。
谷さんは僕のそんな感情を知ってか知らずか、更に話し続ける。
「あの子ね、親戚の家でかなり虐められたらしいの。ご飯もろくに食べさせて貰えなくて、着る物なんかボロばかりで。誕生日もクリスマスも、プレゼントなんか貰ったことなかったんだって。だから毎年、この日は、無理して踊るのよ。自分がプレゼントを貰えなかった分、せっかくイブの日に来てくれたお客さんに、プレゼントしてあげたいんじゃないのかしら。本当に優しい子なのよ。それが変な男にガキ押しつけられての、われ、ほんにどたまくんな」
突然谷さんの目付きや、言葉使いが変わった。
「血の繋がってないガキを、何で引きとらなきゃいけんの?それも2人の男のガキを。ふざけんなつ-の。特に2人目の男なんか最悪でよ、博打に女に、借金背負わされちゃって。あんまりどたまきたけ、ビ-ル瓶でどたまかちわっちゃったわ」
こわー。あぁ、そうなんだ。谷さんは任侠の世界で生きてこられたお人なのですね。そうなんだ。それでよく理解しました。熊さんの可愛い短めのトレ-ナ-から覗いている龍の尻尾の刺青の意味が。
今でもたまに「極道の妻達」という映画の岩下志麻さんを、テレビの再放送とかで見ると、この谷さんを思い出す。
それぐらいこの時の谷さんの凄味は、ナイフみたいに鋭かった。
何とか立って歩けるまで回復したKさんは、大事を取って、今日はタクシ-で帰ることにした。
谷さんも一緒に飲もうということになり、3人で後部座席に乗っていた時、Kさんが曇った窓を拭いて、空を見ながらポツリと言った一言が印象的だった。
「サンタさんって、本当にいるのかな?」
僕は口には出せなかったが、心の中で呟いていた。
――いるよ、必ず……。
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3日目。
あまりに寒くて、そして重くて目が覚めた。
家自体古いから、隙間風が入っても仕様がないけど、ありえない格好で寝ている。よく肉布団という言葉があるが、まさにこれがその状態だろう。6畳の部屋に、皆で一緒に寝ているのだから。
もともと僕は一人で寝るのが好きな方で、一緒に誰かと寝るというのは、苦手だった。
しかし僕の上には次男のL君が抱きついて眠っている。それも逆さまで。カエルみたいに。
起きたら目の前にお尻があった。彼からしてみれば、僕は完璧に敷き布団か、抱きつき枕だ。
いつのまにこの部屋に入ってきたのだろうKさんまでもが、僕に抱きついて眠っている。
抱きつくというよりこれはもう、ヘッドロックだ。
長女のSちゃんはそのKさんに抱きつき、何故か次女のRちゃんは、Kさんとは反対側で、僕に抱きつきながらも起きていて、僕の顔をじっ-と見ている。それに気付いて、驚いた僕は「やぁ、どうも」と訳の分からない言葉を発してしまった。
至上最悪の目覚めだった。でも心のどこかで、もう少しこのままでもいいかなと思う自分もいた。だが、この何分後かには、また僕は苛々することになる……。
いつものうるさい朝食前。また皆が僕を見て笑っていた。
――はいはい、また落書きでしょ。
進んで洗面所に行こうとする僕を見て、Kさんだけは顔を赤らめていた。
不思議に思った僕は、鏡を見て笑えなくなった。僕のおでこには太い字で「パパ」と書かれていたのだ。次女のRちゃんが書いたらしいが、リアルな言葉に戸惑った。
――ちょっと!これ油性マジックじゃん!とれないよ……。
「ゼェ、ゼェ、サンタ」
「はい!」
「パパ、後この紐で留めて」
「だから、谷さんパパじゃないですから」
病気で休んでいた谷さんというおばさんが復活したのはいいが、彼女がパパと呼ぶことに違和感を感じた。
「ゼェ、ゼェ、早く」Kさんが怒っている。「はい、すいません!」すぐさまサンタの衣装を着せてあげた。
クリスマスイブ。
今日はクリスマス特別公演と名打って、慌ただしくしている。
やはり今日も僕は袖でスタッフとして手伝うことになってしまった。
谷さんから、支持を受けているのだが、次女のRちゃんのお陰で、薄らと残ってしまった、おでこに書かれたパパを気に入ったらしく、1日中そう呼ばれていた。
照明さん、音響さん、支配人、もぎりの爺さんまでも、僕をパパと呼んだ。Kさんがちょっと嬉しそうなのが怖かった。
特別公演といっても、他から有名なゲストを呼ぶ訳でもなく、相変わらずまばらな客席。
昨日と変わらない状況の中で、Kさんだけは意気揚揚としていた。クリスマスというものに、何か深い思い入れでもあるのだろうか? 昨日よりも激しい表現。
――ちょっと。腰押さえたでしょ? 変な動きしたよ。顔付き変わってきたんだけど。
谷さんもそれは感じたらしく、袖の僕達は暗闇の中無言でKさんを待った。
――早く、早く、帰ってきて……。
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家路に帰る足取りは重かったが、Kさんは笑顔を失わなかった。
この人は本当にすごい人だ。落ち込むよりも、何故お客さんが帰ってしまったのか? どこに原因があるのか? 原因と対策を考えていた。
「何でそんなに前向きなの?」と聞くと「バカだから」と言ってケラケラ笑い、雪を僕にぶつけてきた。そこに丁度迎えに来ていた子供達も加わり、大雪合戦になった。こっちは不利だ。4対1。勝ち目はない。沢山雪の塊をぶつけられていくうちに、僕は笑顔を失っていた。
僕が投げた雪の塊が、次男のLちゃんの顔に当たり、泣きだした。
僕が投げた雪の塊が、次女のRちゃんの雪の防波堤を貫く。
僕が投げた雪の塊が、長女のSちゃんの心を閉ざさせる。
僕は遊びながら、何なんだろう、この感情? と戸惑っていた。怯えてきた子供達は、Kさんの回りに集まる。考え事をしている僕に、Kさんは固い雪の塊をぶつける。僕は痛いと思った。Kさんはそんな僕のリアクションを見ながら言った。
「お前には子供達に対する愛がないぞ。子供達にその雪の塊がぶつかった時のことなんか考えてもないだろう?子供が雪を握る握力と、お前の握力は違う。今ぶつけたのは、お前が子供達に投げた雪の塊。どうだ、痛いだろ?これは遊びなんだよ」
「すいません」とは謝ったが、心の中では「うるせ-な、説教嫌いなんだよ。何様だよ、テメ-」と相手を受けきれない自分がいた。でももう一方では「説教してくれてありがとう」と思っている自分もいた。複雑な感情の中で揺れ動く僕に、Kさんは優しく言った。
「たまには、負けたっていいじゃない」
心にガツンとくる言葉だった。そうだ。この違和感はこのことだったのだ。
何故去っていくバンドの仲間に対して、負け犬呼ばわりをしたのか。今はっきり分かった。
彼等は負けたんじゃないんだ。勝ち、負けを変に意識し過ぎて、周りの人を傷つけてる僕の方こそ、バカだったんだ。ちょっと待てよ。初めてじゃないか? 自分を自分でバカだと思ったことって。そうか、さっき帰り道でKさんが言った「バカだから」って、ひょっとしてこういうことなのか? 僕の心の壁が少しづつ壊れ始めた。待っていた答えがもう少しで見えそうだった。
でもその先を見てしまうと、自分自身が無くなりそうで怖い。それでも僕は、見てみたいと思った。少し未来の自分を……。
部屋に帰ると、すぐ次男のL君をお風呂に誘った。まずは形からでも、ごめんなさいと思う気持ちを、行動で表したかったからだ。ちょっと照れ臭かったが。
L君も最初は嫌がっていたが、Kさんの勧めもあり、嫌々パンツを脱ぎだした。風呂の前の小さな脱衣所で服を脱ごうと向かう僕に、L君が言う。
「ここで脱ぎなよ」
「いいよ。恥ずかしいし。さっ、行こう」
「ここで…、脱ぎなよ」
――ちょっと待ってよ。Kさんが言うとシャレにならないよ。その目の奥には、雌が見え隠れしてるし。
無視して脱衣所に向かいながら、後を振り返ると、Kさんはもうすでに上半身裸になっていて、僕達と一緒に風呂に入る準備をしていた。
「ちょっと、Kさん、無理。一緒に入らないよ」
「大丈夫。風呂広いから」
「そういう問題じゃなくって」
「じゃ、背中流してあげる」
「いや、だから、すいません」
「そう」
うな垂れて去っていく上半身裸のKさんの後ろ姿は、敗者のプロレスラ-の様だった。
「ありがとう、Kさん。色々あった日だったけど、楽しかったよ」心の中でそう言いながら、僕は笑顔で風呂のドアを開けた。僕の人生勉強2日目が終了した。
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僕も踊りはかじった程度だったが、続けてはいた。
しかしあのドタバタのステ-ジは、彼女の限界を越えていたのだ。
後で知ったことだが、58歳での激しい動きは、日頃の鍛練からきていたのだ。
笑って見ていたあのステ-ジで、何故感動したのか? ここに答えがあった。たかが練習なのに、ステレオのボリュ-ムにも負けないその肉体表現は、まず自分が楽しむという当たり前のことを素直に表現していた。僕はただ、ただその圧倒的なパワ-に惹き込まれ、やっぱり口をあんぐり開けたまま、あまりにも集中していた為、よだれを垂らしてしまった。
1時間近くの練習が終わり、また頭にワカメを乗っけたヘア-スタイルの彼女に、僕は何かをしてあげたくなった。
辺りを見回し、タオルを見付ける。それをそっと差し出すと「あら、優しいのね」と言って笑うKさん。「今から一緒にお風呂に入る?」と言う彼女に「冗談ばっかり」と笑う僕。
――いやいやいや、ちょっとヘコんだ目してるじゃん。本気だったのかよ!
何となく気まずい空気が流れた。突然「ブッ」とおならをして笑う彼女。彼女なりの優しさなのだろう。可愛い人だ。
僕はどんどん自分の心の壁が崩れていくのを感じていた。
風呂から上がったKさんは「昼飯食うか?」と言ってラ-メンを作ってくれた。玉子を入れてくれるのは嬉しかったが、最後にス-プを飲む時に、ジャリっと玉子の殻が入っていたのには閉口した。大ざっぱなKさんらしいけど。
壁に貼られてある、子供達が書いたKさんの似顔絵。多分学校の授業か宿題のどちらかなんだろう。しかし芸術家肌のRちゃんが書いたお父さんという絵が気になった。だって、何の色もない、顔のない絵だったから。Kさんに聞いた。
「Kさん、何であの絵、お父さんの顔がないの?」一瞬彼女の顔が曇った。
――まずいことを聞いたかな? そういえば、玄関に男物の靴もなかったし。泊めさせてもらっただけでも、有り難いのに、プライベ-トまで介入するのはよくないな。
僕は話題を変えようとした。
「あのね――」
「さっき何か言った?」
――何だよ、聞いてなかったのかよ! 変な気遣いして損した。
不貞腐れている僕に、Kさんは優しく言った。
「私、バツ2なのよ。あの子達は、その別れた男達の子供なの。連れ子の人を2回好きになったんだけど、非道い男達でさ。私が引き取ったの」
何も言えなかった。どんな人生がこの人にはあったのだろう。寂しそうに台所で子供達の夕飯を作る彼女が、何だかいとおしかった。
そんな僕の心配をよそに「今日も見にくるか?」と笑って誘うKさん。僕は「うん」と頷く。ドアを勢い良く開け、まるでヤクザの親分みたいに歩くKさんは格好よかった。その後をスタスタとついて行くチンピラ。さぁテス-ジの始まりだ……。
「ゼェ、ゼェ、ゼェ。水、水くれ」
「はい!」
「ハァ、ハァ、その衣裳。ピンクの帽子」
「これですか?」
「ハァ、ちがう。その横!」
「はい!」
衣裳チェンジを手伝うおばさんが、急な病気の為に休んでしまい、急遽その代役を仰せ使ってしまった。
大まかな進行表は手渡されたが、初めての経験で何が何だか分からなかった。
今ならうちの劇団では、こんなこと毎回のことだから、慣れているけど、この時ばかりは、嫌な汗を掻き捲りだった。
ただでさえ訳が分からない状況なのに、死にそうな形相をした、象みたいなKさんが、汗だくで頭にワカメを乗っけて帰ってくる。それだけで暴力だった。
今日のお客さんは、観光か何かで立ち寄ったのか分からないが外国人が2人。他には2~3人の年配の方。袖口で彼女の踊りを見ていた僕は、やはり感動していた。
例えお客さんが1000人いようが、1人しかいなかろうが、この人には関係ないだろう。とにかく純粋に、一生懸命なのだ。僕はスタッフではあるが、一緒に同じ物をKさんと作っている喜びに震えていた。
「ハァ、ハァ、ブラのホックが壊れた。取ってくれ」
「分かりました!」
「ハァ、ハァ、水」
「はい、どうぞ!」
「センス。ハァ、ハァ」
「はい!」
ショ-も後半に差し掛り、ヨタヨタと舞台に出ていく彼女を見ながら、僕は祈るように手を合わせた。どうか何事もなくこのショ-がおわりますようにと。
――あっ、ヨロけた。でも笑顔でカバ-している。あれ? ちょっと、センスここに忘れてるよ! どうすんだろ? あっ、気付いた。えっ? もがいてるの? いや、違う。センスを投げろってことか。よし。あっタイミングがずれた。頭に当たった。うわ~、睨まれた。ごめんなさい。
「ゼェ、ゼェ、たんこぶできたぞ」
「ごめんなさい!」
「ゼェ、ゼェ、水」
「はい!」
「ハァ、ハァ、セ-ラ-服」
「えっ?進行表と違いますよ」
「ハァ、外人の乗りが悪い。ハァ、ハァ、構成変える」
「でも、ラスト演歌でしょ?照明も――」
「早く!」
逆に、こんな特注のセ-ラ-服の方が外人に受けないと思ったけど、マジックテ-プで留める、コントみたいなセ-ラ-服を着させてあげて、僕はファイナルラウンドを送り出した。
もうこれはボクサ-を送り出すセコンドの心境だった。
衣裳替えが長い分、勢いよく客席に出ていった彼女だが、そこには誰もいなかった。お客さんのいないストリッパ-。あまりにも惨めだ。
それでも彼女は踊り続けた。彼女が入り口の扉をチラチラ見ながら、踊っているのを見て、僕はプロだと思った。彼女は待っているのだ。新しいお客さんを。今仮にダラダラ踊っていたら、その入り口から入ってきたお客さんは「何だ、こんなものか」と思うかもしれない。それは彼女のプライドが許さないのだろう。彼女は最後まで集中して、ショ-を成功させようとしていた。
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